防犯ブザー
水色のランドセルを背負った少女が防犯ブザーを鳴らした。
僕を見て鳴らしたわけではないと思う。
久々にあの電子音を聞いた。
最後に聞いたのはいつだっただろうか。
防犯ブザーが鳴るか鳴らないかのギリギリまで、栓を抜くことが好きだった。
鳴らしてしまった後のやっちまったという感覚、高まる体温、僕はクソガキだった。
幸いなことに防犯ブザーを実際に、正しい用途で使用するようなシチュエーションには遭遇しなかった。
水色のランドセルを背負った少女は1人で歩いていた。退屈そうにとぼとぼと、防犯ブザーに指をかけながら。
これ以上見つめていると正しい用途で使われてしまうと思い僕は足早にその場を去った。